山下議員の法解釈が正しいかどうかを確認するために、議長の指示により植松議員(虹の会)と議会事務局副参事が12月9日に文科省に出向いて説明を受け、文科省の説明を12月13日に開催された懲罰特別委員会で事務局副参事が報告しています。

引用 [1] ~ [5]

○事務局副参事

それでは私から文部科学省訪問について御説明をいたします。

さきにありましたが、議長より命を受けまして、12月9日、上京しまして、文部科学省初等中等教育局初等中等教育企画課長ほか2名と面談をしてまいりましたので、そのてんまつを報告させていただきます。当日は、訪問いたしました理由として、これまでの第一・第二中学校区の学校統合に係るこれまでの概要と、本会議における一般質問の通告状況について御説明をいたしました。文部科学省初等中等教育企画課長からは、まず、教育委員会制度の趣旨として、政治的中立の確保が定められていること。合議制の教育委員会が自ら管理・執行する必要がある事務として、教育委員会所管の学校、教育機関の設置・廃止に関することなどの事務が所管としてございます。また、全ての地方公共団体に総合教育会議を設置することとし、そこで首長と教育委員会の密接な関連により事務を執行していくことなどが説明されたものであります。続きまして、関連する条文といたしまして、地方自治法第149条第1号、こちらでは、普通地方公共団体の議会の議決を経るべき事件につきその議案を提出すること。また、学校教育法第2条では、学校は、地方公共団体のみが、これを設置することができること。地教行法第21条におきましては、教育委員会の所管に属する第30条に規定する学校その他の教育機関の設置、管理及び廃止に関することなどを教育委員会の職務権限として規定していること。また、第22条では、長の職務権限として、教育財産を取得し、及び処分すること、また、同条6号では、前号に掲げるもののほか、教育委員会の所掌に係る事項に関する予算を執行することが規定されているとの説明がございました。

こうした上で質問をいたしました。

学校教育法第2条、公立小学校中学校の適正規模・適正配置等に関する手引で規定する学校の設置者たる地方公共団体の示す範囲はという質問[1]に対し、文部科学省からは、地方公共団体の長は市長であり、議案の提出権、予算の執行権が職務権限とされている。地方公共団体には、行政機関、執行機関として教育委員会が設置されており、公立学校の設置・管理・廃止につきましては、地教行法第21条の規定により教育委員会の職務権限である[2]という説明がございました。こうしたことを踏まえまして、学校の設置者たる地方公共団体の長と教育委員会が密接な関係で進めていくというスタンスである[3]という説明がございました。続きまして、地方自治法第244条の2に規定される公の施設の設置、管理及び廃止につきまして、市長が議会に議案を出すため、その権限は市長にのみ属するのかという点について確認をしましたところ、条文におきましては、普通地方公共団体が行うという規定であると。市長は、教育委員会において決定された事務事業に関し、市長の議案提出権により議会に議案を提出するという流れになりますが、独立した執行機関たる教育委員会の職務権限である学校の設置、廃止に関し[4]地教行法第29条に基づく協議を行った上で、設置や廃止などの議案の提出、予算の執行を行っていくため、長の意思はここで反映されるというものである[5]などについてのお答えがありました。これらの事項については、出張当日、12月9日に議長に対し口頭で報告し、12月10日に書面で議長決裁を取ったものでございます。

以上で説明を終わります。

(令和3年12月13日懲罰特別委員会会議録)

全体としては検証2-2で確認している法令解釈と同じですが、公立学校の設置・管理・廃止の最終的責任が誰にあるかについては説明されていません。学校の設置・管理・廃止の職務権限という点で、検証2-2での解釈とやや異なるとも受け取られる説明がありますが[2], [4]、簡略化した表現になっているために生じた差異、あるいは事務局副参事を通しての説明であるために文科省の元々の説明とニュアンスが異なる表現になってしまったとも考えられます。そう解釈しないと、地教行法の条文とつじつまが合いません。また、学校の設置、廃止に関し「地教行法第29条に基づく協議を行った上で、設置や廃止などの議案の提出、予算の執行を行っていくため、長の意思はここで反映されるというものである」[5]とも説明していますが、これは学校の設置、廃止についての教育委員会での決定が最終的なものではなく、長との協議つまり総合教育会議での協議・調整を経る必要があるということです。この説明では学校の設置・管理・廃止の最終的責任が誰にあるかは自明ではありませんが、少なくとも教育委員会の権限と責任だけで実施できるものではなく、市長にも相応の責任があることを示しており、検証2-2および検証2- 3の結果とも合致しています。

また、この報告の後で江本議員(未来の風)が指摘しているように、植松議員と事務局副参事は単に関連法令の説明をしてもらうために文科省に行ったのではなく、山下議員の発言での法解釈が正しいかどうか、つまり学校の設置・管理・廃止の最終的責任が市長にあるのかどうかを確認するために行ったはずです。彼らは、「学校設置・廃止の最終的責任が市長にあるのかどうか」という質問を文科省に尋ねなかったのでしょうか。「学校の設置者たる地方公共団体の示す範囲はという質問」[1]はしているようですが、質問の真意が曖昧であり核心を突く質問ではありません。その結果、文科省の答えも最初の説明の繰り返しになっています。最終責任が市長にあるのかどうかを尋ねたけれども文科省からは明確な回答が得られなかったのか、あるいは文科省から明確な回答があったけれどもこの報告には含めなかったのか、疑問が残ります。

さらに江本議員が、文科省での聞き取りの結果山下議員の法解釈をどう認識したのかと質問していますが、事務局副参事は前の説明の概要を繰り返しただけで、植松議員は答えることを拒否しています。委員会はここでの数回のやり取りの後すぐに各委員の意見陳述に移ってしまい、文科省の説明を受けて山下議員の法解釈が正しいのかどうかについての議論は全くされていません。つまり、山下議員の法解釈が正しいかどうかについては、懲罰特別委員会としては何の結論も出していません。それにも拘らず、懲罰賛成派の各委員は山下議員の法解釈が間違いであると決めつけ、あるいは委員によっては関連法令の自分なりの解釈を入れて意見を述べています。このことは、懲罰賛成派の各委員の意見は懲罰特別委員会でのこの報告を聞いてからまとめたものではなく、文科省の説明の報告内容を事前に知った上で自分なりに解釈したか、あるいは報告内容がどうなるかは全く考慮せずに山下議員の法解釈が間違いであると決めつけて意見を述べていることになります。いずれにせよ、山下議員の法解釈を議論もせずに間違いであると決めつけていることには違いなく、正当な根拠のない主張であると言えます。

加えて、文科省の説明の報告は最初に議長に対して行なわれていますから、もし懲罰賛成派の委員が事前に内容を知っていたとしたら、派遣された2人あるいは議長から事前に情報を得たことになり、中立性の観点からは大きな問題になります。 次の検証2-5で、山下議員の法解釈を間違いとする各委員の意見を検証しています。