この問題の経過においては、浅原議長が議会事務局への指示、長田副議長への指示、さらには議員全体会議の招集などを行って中心的な役割を果たしていますが、これらの一連の行為に対して長野県栄村の松尾村議会議員が厳しく糾弾しています。

9月5日に長田副議長が山下議員宅を訪問して写真の撮影などを行っていますが、長田副議長が独断で行動したとは考えられず、浅原議長の指示によるものと考えられます。しかし、この問題が市有地の不法占有であるというのであれば、それは山下議員個人と市との間の問題であり、市議会および市議会議長にはそのような問題について調査をする権限はありません。

議会には地方自治法の第百条による調査権がありますが、この調査権は、行政の不適切な予算支出などその地方公共団体の事務に関するものであり、議員個人の問題に関する調査を行うことができる権限ではありません。さらに、自治事務に関する調査であったとしても、調査権限は議会にあるのであり当然議決を必要とします。そのため、通常は百条委員会と呼ばれる特別委員会を議決によって設置して調査を行うことになります。しかし、今回の問題に関しての調査を行う議決がなされた記録はなく、長田副議長の調査は浅原議長が独断で指示したものと考えられます。

地方自治法 第百条

第百条 普通地方公共団体の議会は、当該普通地方公共団体の事務(自治事務にあつては労働委員会及び収用委員会の権限に属する事務で政令で定めるものを除き、法定受託事務にあつては国の安全を害するおそれがあることその他の事由により議会の調査の対象とすることが適当でないものとして政令で定めるものを除く。次項において同じ。)に関する調査を行うことができる。この場合において、当該調査を行うため特に必要があると認めるときは、選挙人その他の関係人の出頭及び証言並びに記録の提出を請求することができる。

(地方自治法)

また、市議会の議長の権限は議会運営に関するものであり、個人の問題を調査する権限がないのはもちろんのこと、自治事務に関する問題であっても議長に調査権限があるわけではありません。(沼津市議会会議規則には議長に関する規定はなく、地方自治法での規定が適用されると考えられます)

地方自治法 第百四条

第百四条 普通地方公共団体の議会の議長は、議場の秩序を保持し、議事を整理し、議会の事務を統理し、議会を代表する。

(地方自治法)

さらに、浅原議長は議員全体会議なるものを招集して、そこで山下議員の個人的な問題について複数の議員が質問することを許していますが、この議員全体会議には法的な根拠が全くありません。 地方自治法に規定された議会の会議は定例会と臨時会ですが、これらの会議はその地方公共団体の長によって招集されます。第百条に規定された調査に関しては、その第12項に以下のような規定があり、沼津市議会会議規則にはこの第12項に関連して第167条の規定があります。

地方自治法 第百四条 第12項

 議会は、会議規則の定めるところにより、議案の審査又は議会の運営に関し協議又は調整を行うための場を設けることができる。

(地方自治法)
沼津市議会会議規則 第167条(協議又は調整を行うための場)

(協議又は調整を行うための場)

第167条 法第100条第12項の規定による議案の審査又は議会の運営に関し協議又は調整を行うための場(以下「協議等の場」という。)を別表のとおり設ける。

2 前項で定めるもののほか、協議等の場を臨時に設けようとするときは、議会の議決でこれを決定する。

3 前項の規定により、協議等の場を設けるに当たつては、名称、目的、構成員、招集権者及び期間を明らかにしなければならない。

4 協議等の場の運営その他必要な事項は、議長が別に定める。

(沼津市議会会議規則)

この第167条の第1項にある別表に定められ議長が招集することになっているのは全員協議会であり、それは地方自治法第百条による調査に関連した議案の審査又は議会の運営に関する協議・調整を行うための場ですから、今回の議員全体会議をこの全員協議会であるとみなすことはできません。そもそも個人の問題を調査する権限は議会にはないので、そのような問題に関して全員協議会を開くこと自体が不当になります。また、第167条第2項の臨時の協議等の場を設ける場合には議決が必要であり、議員全体会議はその手続きも取っていません。

沼津市議会で過去に開催された全員協議会の場合は議事録も作成されており閲覧することができますが、議員全体会議では議事録も作成されておらず、全員協議会とは明らかに異なる取り扱いがされています。

沼津市議会会議規則 別表(第167条関係)

別表(第167条関係)

名称目的構成員招集権者
全員協議会市政及び議会の重要事項に関する協議・調整を行うため全議員議長
会派連絡会改選後、議会運営委員会が組織されるまでの間、議会運営全般について協議・調整するため2人以上の会派の代表者初回は議会事務局長、次回から会派連絡会座長
議会だより編集委員会議会だよりの編集・発行について協議・調整するため副議長及び2人以上の会派から選出された議員議会だより編集委員会委員長
(沼津市議会会議規則)

余談ですが、第167条に記述された別表は地方自治法第百条の第12項に関連した協議・調整を行う場として規定されているはずですが、別表の全員協議会の目的はそれをはるかに超えた範囲になっていると共に、会派連絡会や議会だより編集会議も含まれており、第167条と整合が取れていません。

以上のように、議員全体会議は法的根拠が全くないままに浅原議長の独断によって招集されたものであり、さらにこの会議では、一般傍聴者が見守る中で複数の議員が山下議員の個人的問題について何度も質問して追及するなど、不法と言える行為がなされています。またこの会議では、植松氏と市との間での土地の売買契約や記録がその時点では確認されていないにも関わらず、山下議員による市有地の不法占有であると決めつけて会議が進められており、山下議員に対する名誉棄損であり人権侵害である考えられます。

さらには、浅原議長による調査の指示や、法的根拠がない不当な議員全体会議の招集は越権・不法行為であり、議長による議会の私物化としか言えません。このような行為を行った議長には議長の資格はもちろん議員としての資格があるとは言えず、直ちに議員辞職をすべきです。